いま、わたしは、いったい何に、そうまでしてすがりついているのだろう。

 

あの時の誰かの時のような歴史も、あの時の誰かのような情熱も、あの時の誰かのようなシンパシーも、何も抱いていないはずだ。

 

彼に抱くそれは、何も、ないはずだ。

 

理性は確かにあるはずなのに。

 

手放した後に失うものも、かといえ色んなものを失ってまでつなぎとめた先に残るものも、きっと何も、ないはずだ。

 

その先にある空白に、それではわたしはいったいどうして、そうまでして、いろんなものに、目をつぶってまで。

 

彼にとってなんでもない、特別でもない些細なことが、わたしにとっての感動すべき出来事だったからだろうか。

それがただの気まぐれだったかもしれなくても、わたしにとっては一大事で、大事件だった。

 

本当に、かけがえなのない。

振り返ってももう、取り戻せないかもしれないほど。

 

本当に些細な、彼にとっての気まぐれな努力。

それがわたしにとっての一大事。

 

気まぐれな笑顔。意味もない一瞬。

わたしにとっての大きな感動。

 

陳腐な言葉しか並べられない。

それでもたったその一瞬が、そのひと時が、その一瞬の体温が、そのたった一言が。特別で。かけがえもなくて。振り返るたびに辛くて。手放し難くて。

 

理由なんてきっとない。

それが事実。

その事実にただ、わたしはかけがえないほどの感謝の気持ちを抱いている。

 

ここに連れて来てくれてありがとう。

 

にくさや悔しさだってもちろんあるけど、どうしたってそれが先立っているから。

だからどうにも捨てられない。

 

ぜーーーーーーんぶね。わかってたし、わかってるんだ。

手放してあげられなくって、ごめんね。

大人になりきれなくって、ごめんね。

 

きっとまだまだ捨てきれないし、まだまだきっと捨てきれない。

答えはきっと、最初からないから見つからない。

 

それでもまだしばらくは涙が出そうなので。

嗚咽が漏れるほどに辛いので。

 

まだまだ整理がつくのは先の話になりそうだけれど、そしたらきっと、笑顔でありがとうだけ言いたいんです。

 

まだもう少しだけ頑張りたいだなんて贅沢な気持ちが残っているうちは、きっと話すことすら許されないから。

もう少しだけ我慢して、そうしたら、きっと。

 

ごめんね。

ありがとう。